2012年7月27日金曜日

“世界的ウナギ博士”からの提言 「ニホンウナギを守ろう!」/塚本勝巳(海洋生命科学者)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120727-00010000-php_s-bus_all
どうすれば効果ある保全活動ができるのか
     
 ここ3年間のニホンウナギ資源の激減ぶりをみていると、ただならぬものを感
じる。それは大西洋の2種にも匹敵する減り方だ。ヨーロッパウナギは 2007年に
ワシントン条約の付属書IIに記載されて国際商取引が制限されるようになった。
また2008年には「国際自然保護連合(IUCN)」 の絶滅危惧種としてレッドデー
タブックに記載されるに至った。

 このままいくといずれ、ニホンウナギも絶滅危惧種に指定されかねない。そう
なる前にわれわれはできることから着手してウナギの保全に努めなくて はなら
ない。すなわち、海の彼方の海洋環境についてはひとまず研究レベルにとどめ、
人が改善可能な乱獲と河川環境の問題に取り組みたい。

 ウナギの乱獲は卵やレプトセファルスを除くすべての発育段階に及んでいる。
ウナギは接岸直後のシラスウナギから、クロコウナギ、黄ウナギ、河川 の下り
ウナギ、さらには沿岸を産卵回遊する銀ウナギまで漁獲される。

 韓国でウナギの資源をめぐって紛争があった。黄ウナギや銀ウナギを獲ってい
る河川組合は河口や沿岸でシラスウナギを獲るシラス採捕組合に「お前 たちが
シラスを獲るから、俺たちの川にウナギが遡上してこない」となじり、逆にシラ
ス採捕組合は「下りの銀ウナギをもう少し獲らないでいてくれた ら翌年シラス
が増えるのに」と要求する。結着のつかない水掛け論だ。

 ウナギの生活史はすべての発育段階がぐるっと円になってつながっているの
で、どこで個体数が減っても最終的には資源減少につながる。逆に資源を 増や
そうとするなら、生活史の全段階について保護の手当てを払わねばならない。生
活史の多くの段階で人びとに利用されつくしている魚であるため に、様々な利
害関係が生じて、ウナギの保護はひと筋縄ではいかない。人に近すぎる魚である
が故の、難しさである。

 では、どうすれば効果ある保全活動ができるのか。

 まずは、銀ウナギや下りウナギの捕獲制限であろう。産卵回遊の準備を始めた
銀ウナギや実際に産卵のために降海中の下りウナギを1匹でも多く産卵 場に返し
てやることで、次世代の資源のかさ上げにつながる。人工種苗生産の技術がまだ
実用化されておらず、今後もしばらくは、養鰻業の種苗を天然 のシラスウナギ
に100%依存しなくてはならない現状を踏まえると、今の時点でシラス漁業は続
けざるを得ない。

 下りウナギを規制しておいてシラス漁業を続けるのは不公平で、先ほどの韓国
のウナギ騒動と変わりはないが、日本人一般の蒲焼きに対する大きな ニーズを
考えるとシラスウナギを採って養鰻業の種苗とするのは致し方ない。その代わ
り、下りウナギで生計を立てている河川漁業者には適正な補償の 行政処置や代
替収入源の斡旋をしたい。

 こうして下りウナギの保護が実現すると、カンフル剤のように比較的短期間で
効果が期待できる。シラスウナギ1匹と下りウナギ1匹の資源回復に対 する効果
は全く違う。脂ののった下りウナギを賞味するのを楽しみにしている人もいる
が、人数はそれほど多くない。こういう人は天然のウナギを食べ ず、養殖もの
で我慢していただきたい。

 ウナギでも根強い天然もの信仰があるが、今の養殖技術は最高レベルにあり、
天然ものを凌ぐ高品質の養殖ウナギも各地で作られている。天然の場合 は棲み
場所や餌の種類、年齢、性別、季節などにより、味や品質に大きな差がある。

 しかし、養殖ものの品質は高レベルで安定している。ウナギにおいて、天然信
仰はおそらく迷信であろう。それに天然ウナギは食べると危険な場合も ある。
特に下りウナギの場合、長い年月、河川生態系のトップに君臨して成長した個体
なので、水域に流れ込んだPCBやDDTなど様々な有害汚染物 質を多量に蓄積して
いる場合がある。特に汚染物質が蓄積しやすい河口汽水域や沿岸干潟域に棲み着
いたウナギはそのおそれが大きい。しかし、残念な ことに、こうした場所にこ
そ多くのウナギが棲み着いているのだ。

 穴釣りやウナギ筒を使ったウナギ捕りはおもしろい。しかし、これらが数年し
て銀化し、下りウナギとなってマリアナ沖で再生産に加わることを考え ると、
できることならウナギの遊漁も極力控えたい。

 川遊びでウナギを捕まえる楽しみは子供や孫の代にまた復活させることにし
て、今はじっとウナギを見守ってやりたい。全国のウナギ捕りファンが 10年我
慢すれば、必ず効果はあるはずだ。

 また、全国的にウナギを漁業権の対象魚種から外すことも一考に値する。河川
漁業や遊漁の対象からウナギが外れることで、産卵場へ旅立つ下りウナ ギの数
が大幅に増えるだろう。さらに、漁業権魚種からウナギを外すことで漁業権に付
随する義務放流の必要がなくなる。

科学的放流実験に基づく放流事業の見直しを
     
 放流という増殖方法は現在、遺伝的多様性への悪影響、病気の伝播などの点で
十分な検討が必要であるとの指摘があるが、なかでもウナギの義務放流 の場合
はその他の問題も懸念される。外来種混入問題である。

 今後、ニホンウナギのシラス不足を受けて、外国産シラスウナギの養鰻が盛ん
になることが予想される。現在すでにフィリピンやインドネシアからバ イカラ
ウナギ、マダガスカルのモザンビークウナギ、北米のアメリカウナギ、オースト
ラリアからオーストラリアウナギ、ラインハルディウナギなどが 輸入され、養
鰻適性が試験されている。

 養鰻池で成長の悪い外来種のウナギが義務放流の種苗に回され、河川生態系に
侵入してくる可能性は高い。これによって在来のニホンウナギとの間で 餌、棲
み場所の競合が起こり、ニホンウナギの生息環境は悪化する。

 かつて1968年から10年間ほど、ヨーロッパウナギのシラスウナギが大量にわが
国に導入されたことがある。やはりニホンウナギの種苗不足を補 うためだ。
ヨーロッパ種は成長が遅い、逃亡しやすいなどの技術的問題があり、日本の加温
式短期養殖法に適合しないとのレッテルを貼られて、やがて 養鰻池から消えて
いった。しかし、これらがなぜか大量に天然の水塊に棲み着いた。人が川や池に
投棄したり、自ら逃げ出したりしたものだろう。

 1997〜1998年に採集されたウナギの中で、ヨーロッパウナギの占める割合は宍
道湖で31.4%、三河湾で12.4%にもなった。ウナギの 大部分を放流に依存する
新潟県魚野川では、簗漁で捕れる下りウナギのほぼ100%がヨーロッパウナギで
あったことがある。1個体アメリカウナギも 見つかった。

 このほか、大分県入津湾にも多数の巨大なヨーロッパウナギが棲み着いてい
て、潜ってみるとハマチ養殖生け簀の下の底泥中から鎌首をもたげた姿が 見え
た。さらに驚くことには、東シナ海の男女群島で夜間表層に浮かび上がってきた
産卵回遊中の銀ウナギを70個体あまり調べてみると、中に1個体 のみであるが、
ヨーロッパウナギが入っていた。ニホンウナギと一緒にヨーロッパウナギがマリ
アナ沖の産卵場を目指して泳ぐ姿を想像するとぞっとす る。

 両種のハイブリッド(雑種)の報告はまだないが、実験的には両種の間で人工
仔魚を得ることに成功しているので、天然でもその可能性は否定できな い。そ
の地域にいるものを増やし、これを大切に末永く利用していくのが正しい増殖の
やり方である。

 ヨーロッパでは河口域で採捕したシラスウナギの移送・放流が行われている。
日本でも国の事業費を使って養殖ウナギの放流が行われている。放流は 行為そ
のものがわかりやすく、増殖対策といえば放流が真っ先に挙げられる。しかし、
放流に使う種苗、放流時期や場所など十分に検討した上で実施し ないと効果が
期待できない。むしろ資源に悪影響を及ぼすこともある。

 まずは、効果を検証する科学的な放流実験を行い、最も効果の上がる放流方法
を探りたい。一般に人の手が加わるほど、すなわち飼育期間が長くなる ほど、
魚は野性を失い、野外に放流したときの適応度が下がる。

 かつての稚アユの人工種苗で見られたように、行動が天然アユと大きく異なる
ために期待された放流効果が得られなかった例がある。ウナギでこうし た研究
はまだないが、長期間養鰻地で養殖されたウナギも野外でのカワウやゴイサギな
どの天敵からの回避行動や摂餌行動が十分に備わっていないこと が懸念され、
これらは放流後の生き残りと成長、ひいては放流効果に大きな影響を及ぼす。

 養殖ウナギは性比が雄に著しく偏ることが知られており、雌の多い上流域に雄
を大量に放流したときの効果は今のところ不明である。それならば性分 化前の
体長20センチメートル未満のクロコウナギを放流すればどうだろうというアイデ
アもある。さらにいえば、いっそのことヨーロッパのように採 捕直後のシラス
ウナギを放流するのがよいのではないかというところまで行き着いてしまう。こ
れならば飼育によって野性が失われる心配はほとんどな い。

 しかしそれなら、シラスウナギの漁獲規制のほうが手っ取り早いとも考えられ
る。採捕によるダメージや移送による疲労がない分、そのほうがいいに 決まっ
ている。しかし人は、やはり自分の手でなにかをやりたいらしい。達成感を得た
いらしい。こうした欲求を満たしてくれるのが放流だ。

 江戸時代に、捕獲した魚やカメを川に逃がして、殺生を戒める放生会という宗
教儀式があったが、これまでの放流はちょっとこれに相通じるものがあ る。し
かし現在のウナギの危機を救い、実際の増殖効果を追求するなら、放流は儀式的
なものであってはいけない。真に効果のある放流をしなくてはな らない。

 シラスウナギ放流を実施するとして、その場合はどこに放流するかが、問題で
ある。アユのように放流したものを1シーズンの漁獲によって大部分回 収してし
まう放流スタイルとはわけが違う。増殖のためのウナギ放流の場合は、確実に銀
ウナギとなって川を下り、産卵場を目指してほしいわけであ る。

 もし、シラスウナギをダムや堰堤など河川構造物の上流に放流した場合、成長
するまではよいが、その後銀ウナギとなって川を下る時が問題となる。 ウナギ
の降海のために様々な装置が考案され、試されているが、川を遮断する大規模な
河川構造物を安全に通過させられる有効な手立てはまだないから である。

 したがって増殖目的のウナギ放流は、成長目的の空間拡大という意味だけでな
く、確実に降海できる場所に放流するのでなければ意味がない。現在、 ウナギ
の放流事業については十分な検討のないまま、放さないより放したほうがよいだ
ろうとの暗黙の了解で進んでいる。今後、ウナギについても科学 的放流実験に
基づく放流事業の見直しを早急に行いたい。同時に、放流以外の増殖対策にも目
を向け、力を注ぎたい。密漁の河川パトロールや多自然型 河川への改修など、
天然ウナギの保護と河川環境の保全・再生のためにやるべきことはたくさんある。
(PHPサイエンスワールド新書『ウナギ大回遊の謎』より)

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、M 、 埼玉県桶川市坂田に住むカリスマ主婦森田順子
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┃ Θ >  雛形あきこに似ていると評判の森田順子
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